目次
本記事では、IT業界におけるSESの仕組みについて、
筆者の経験を元に、記載していきます。
筆者について簡単に紹介をさせて頂きます。
▼筆者の紹介(ITエンジニアとしての業務経験) IT業界経験年数 7年(営業経験:4年(内SES営業2年)SE経験:4年) ▼案件や業務の経験 ・PCキッティング・展開 ・各種ネットワーク詳細設計・構築 ・各種サーバー設計・構築 ・ヘルプデスク(Windows、Office365製品サポート) ・仮想化設計/構築 ・クラウド設計/構築
筆者のSEプロフィールの詳細については、下記記事で紹介しています。
SES契約とは?職業紹介や派遣と似ている?
筆者は、20代の頃、人材系の営業職を希望し、中小IT企業の営業職へ転職しました。
当初描いていたのは、「職業紹介」「派遣紹介」といったイメージの人材の営業でした。
しかし、IT業界における人材の営業には、上記の様な職業紹介・派遣とは別に、「SES営業」という業界特有の職種があった事を、当時はまだ知りませんでした。
SES営業とは、ITエンジニアを求めている企業(案件元) に、案件を探しているITエンジニア(人材)を提案する職種です。
なんだ、職業紹介や派遣と一緒のようなものではないか。
私もそう思っていましたが、実は、職業紹介・派遣とは似て異なる点があります。
SESの特徴:派遣や、職業紹介事業との違い
職業紹介事業や派遣とSESの大きな違いは、契約の経路、事業に必要な許可等です。
▼SESと職業紹介の違い 職業紹介:企業へ人材を紹介し、企業と人材間で雇用契約が締結されたことを条件に売上(報酬)を受け取るもの 契約経路: ①企業→人材(雇用契約) ②企業→職業紹介事業者(準委任契約) 必要な許可:有料職業紹介事業の許可有料職業紹介事業の許可が必要 SES:企業人材を紹介するが、雇用や契約では無く準委任契約を締結し、売上を受け取るもの。 契約経路: ①企業→SES事業者(準委任契約) ②SES事業者→人材の所属する企業(準委任契約) 必要な許可:特になし
次に、派遣とSESの違いについては、派遣契約の場合は、契約可能な人材の所在が違います。
▼SESと派遣の違い 派遣:企業へ人材を紹介し、派遣契約が締結し売上(報酬)を受け取るもの 契約経路: ①企業→派遣会社(派遣契約) 契約可能な人材の所在:自社(派遣会社のみ)可能 必要な許可:労働者派遣事業許可が必要 SES:企業人材を紹介するが、雇用や契約では無く準委任契約を締結し、売上を受け取るもの。 契約経路: ①企業→SES事業者(準委任契約) ②SES事業者→人材の所属する企業(準委任契約) 契約可能な人材の所在:自社、または他社でも可能 必要な許可:特に無し
SES営業の特徴:請負契約との違い
派遣や職業紹介との違いは上記の通りですが、結局のところ何が違うのか?
SES(準委任)契約は、本来は請負契約に近しい契約形態となります。
▼請負契約の例 お客は、企業Aと請負契約を結んだ。成果物は、「赤いリンゴ10個」 お客(エンドユーザー):赤いリンゴを10個作ってほしい ↓請負契約 受託企業A:赤いリンゴを10個作れないと契約不成立
請負契約には、主に下記のような特徴があります。
・お客は、「赤いリンゴ10個」と成果物を明示できる
→企業Aが作ったリンゴが「青」だったり、「9個」だったりすると、成果物と合わないため、契約違反になる。
・お客は、「赤いリンゴを10個作る」という家庭において、企業Aには指図(業務指示)出来ない
→例えば、リンゴを国内の工場で作れ とか、国外の工場で作れ とかの指図はできない(契約条項に入っていない場合)
・企業Aは、人員を自由に決める事ができる。
→企業Aだけでは人が足りなければ、企業Bから人を呼んだりすることも可能。
▼SES契約の例 お客は、企業AとSES契約を結んだ。名目は、「赤いリンゴの制作支援」 お客(エンドユーザー):リンゴをたくさん作ってほしい ↓SES契約 受託企業A:リンゴを作る事自体 の契約なので、青くても黄色でも、1個でも10個でも契約は成立する
SES契約は、請負契約に似ていますが、下記のような違いがあります。
・お客は「成果物」を指定できない
→お客の要望は「赤いリンゴ10個」だったとしても、契約は「リンゴを作る事」になるため、結果的に出来上がったものが「黄色いリンゴ」や「5個」でも、契約は不成立では無い。
まとめると、
請負契約は「成果物」の提供です。
SES(準委任)契約は、「労務力」の提供です。
派遣、請負、SESにおける違いについて、簡単にまとめると下記になります。
▼派遣、請負、SESの違いについて [顧客の指示命令の権限] [成果物の定め] [提供物] 派遣: あり なし 労働力 請負: なし あり 成果物 SES(準委任): なし なし 労働力
派遣契約は、顧客から業務に関して指示命令を受ける事ができます。
請負は、成果物の定めがあります。
SES(準委任)は、上記のどちらも不可となります。
顧客から指示命令を受ける事はできない、成果物も定めることはできない契約 となります。
IT企業のSES契約の流れの実情(多重下請構造)
実際のよくある、IT企業のSES契約の流れを見てみましょう。
▼SES契約の実例 ○○小学校:エンドユーザー sierA:一次受け(元請) ①〇〇小学校→(sier)A 〇〇小学校が、学校のタブレット導入作業を大手システムインテグレーター(sier)Aと契約した。 契約内容:請負契約 成果物:タブレット80台の設定、導入・設置 ②(sier)A→IT会社B sierAが、タブレットの設定作業について、IT会社Bと契約した。 契約内容:SES(準委任) 成果物:無し(労務力) 労務力: IT会社Bの要員:S ③IT会社B→IT会社C IT会社Bが、タブレット作業について、IT会社Cと契約した。 契約内容:SES(準委任) 成果物:無し(労務力) 労務力: (自社の)要員:S
エンドユーザー→A社→B社→C社 という発注の流れです。
個々でのポイントは、 A社(元請けSI)へ参画している「要員S」は、 B社を経由してC社の「要員S」が参画しているという部分です。
この場合、A↔B↔C 間でSES(準委任)契約が行われます。
SES契約の問題点(執筆中)
SES契約で起こり得る問題点は、下記のような点です。
・本来不可である顧客からの直接の業務指示 が発生してしまう事がある
・実質的に、納品物を定められる事がある